「オバマ大統領の広島訪問―静かなる内省の波紋」

「オバマ大統領の広島訪問―静かなる内省の波紋」

27日のオバマ大統領の広島訪問は日本国内と世界中に静かなる「内省」の波紋を広げている。

オバマ大統領は8年前の就任間もない2009年4月5日、プラハで核廃絶を訴えた演説を行ない、それがきっかけでノーベル平和賞を受賞した。

しかし、2009年12月10日ノルウェーのオスロでのノーベル平和賞受賞演説で「正しい戦争、正しい平和」と題して、非暴力のインドのガンジーや米国のキング牧師を称賛すると共に非暴力ではヒットラーの軍隊を止められないと、米軍の最高司令官であることを内外に明らかにし、一部から平和賞受賞演説ではなく戦争演説だ等と批判された。オバマ大統領はまさに大統領職になったのだ。

世界を圧倒する軍事力の最高司令官として7年半様々な事態に遭遇してきたオバマ大統領。とりわけ最近は、北朝鮮金正恩最高指導者が核実験の強行と行使を言明したり、さらにウクライナ・クリミア問題ではロシアのプーチン大統領が「核使用も選択肢として考慮した」との主旨の発言を繰り返す。核が封印された兵器から現実的兵器へ近づいた感がする昨今の国際情勢だ。

オバマ大統領の広島訪問は、日米の和解の象徴であると共に、世界へ向けたメッセージに思える。オバマ大統領は演説の中で「道義」という言葉を使ったが、これはノーベル平和賞受賞演説の中での次のような一節を思い出す。

非暴力ではヒットラーの軍隊を止められないとした上で「ガンジーやキングを忘れたら道徳の羅針盤を失う」と人類の道徳心を訴えている。

安倍総理のスピーチや立ち居振る舞いが、抑制的で実に素晴らしかった。世界史に残る出来事をつくり出した当事者として、日本国の総理として一段と高みに立った。オバマ大統領の広島訪問実現に力を尽くしたケリー国務長官、ケネディ大使、日本側の岸田外務大臣を始めシェルパの皆さんのご労苦にも感謝したい。

新しい時代の始まりだ。

※オバマ大統領のプラハとオスロ―の演説は岩波新書三浦俊章編訳「オバマ演説集」より抜粋