総務大臣が通信キャリアの最大手NTT幹部と意見交換したら、不祥事のようにバッシング。革命的技術が日進月歩のIT業界で最新の情報を得るにはどうすべきなのか

総務大臣が通信キャリアの最大手NTT幹部と意見交換したら、不祥事のようにバッシング。革命的技術が日進月歩のIT業界で最新の情報を得るにはどうすべきなのか

通信キャリア最大手の責任者が、通信行政の所管の総務大臣と会食をして、具体の認可について云々するはずがない。世界を相手にした5~10年先を見通した日本としての戦略的な方向性の話だろう。それでなければ、お互いに話が面白くないし酒も不味い。私の拙い経験からも、そう考える。
日本には苦い経験がある。1970年代の後半、NECの小林会長(当時)はコンピュータと通信が融合する時代が近い将来やってくる。コンピュータアンドコミュニケーション、C&C構想を打ち出した。卓見だ。当時の電電公社はINS(インフォメーションネットワークサービス)の実験を武蔵野・三鷹地区で始めた。1983年に私は武蔵野市長に就任したので、興味深く市役所企画課の職員が端末をおいてオペレーションするのを見守っていた。当時は市役所にホストコンピュータを入れるのを、労働組合が反対した時代だった。
この構想の着眼点は素晴らしかったが、同軸ケーブルの時代だったので情報の通信容量が少なく、ひどくまだるっこしかったのを記憶している。結局、この構想は実らなかった。原因がどこにあるのか、専門家でないので分からなかったが、技術があってデュアルユースが不足していた等と言われている。

それから7~8年経った1990年代初頭、アメリカのゴア副大統領は米国を光ケーブルで繋ぐ情報ハイウェイ構想を打ち出し、米国政府として大胆な規制緩和と投資計画を打ち出した。まさにインターネット時代の幕開けだ。日本は発想も技術もあったが、残念ながら世界をリード出来なかった。私の中学校の同級生がNTTで光ファイバーの技術を発明し、恩賜発明賞を受賞したのもこの頃だ。
それから20数年、今は宇宙に多数の小型衛星を打ち上げ、地上のきめ細かい情報のやり取りをして、様々なサービスを提供する時代だ。米国のスペースX社は18000基の低軌道超小型衛星を所有しているという。
日進月歩の技術革新といったら、ある人からそれは違うと指摘された。今の技術の進歩の早さは秒進分歩だという。総務大臣は電波行政の所管大臣として10~20年先を展望しながら、秒進分歩の世界を正しく把握し官邸とつなぎ方向を出す立場だ。総務省の大臣室だけでなく、時には胸襟を開いて業界のトップランナーと腹蔵なく未来を語ることが必要だ。
野党の質問は料理がいくらだとか、そういうレベルではなく「大臣、通信トップと歓談するのは結構、国民の誤解を受けないように注意しながら、実りあるものを得て下さい。ところで国家のために、どんな事が話題になりましたか?」ぐらいの質問をして欲しい。