武蔵野市くらし地域応援券 プレミアム率100% 市民一人当たり5000円分を郵送で全員に配る ー担当職員の地域振興の執念が異例の形で実現

武蔵野市くらし地域応援券 プレミアム率100% 市民一人当たり5000円分を郵送で全員に配る ー担当職員の地域振興の執念が異例の形で実現

2月中旬、武蔵野市民全員に5000円分の買い物応援券(割引券)が郵送で配布された。この買い物券は何とプレミアム率100%で金券に近い異例の形だ。

昨年5月の新型コロナ感染症による第1回緊急事態宣言が発出された時は日本中がパニックになった。コロナに感染する恐怖と経済活動が停止して、先行きどうなるのかという不安に駆られた。

とりわけ武蔵野市の表玄関の吉祥寺は、東西300m南北300mの高度商業地域に飲食店が500軒ある。軒並み飲食店が潰れ、シャッター街になるのでは?という危機感があふれた。

そこで国の補助金等を活用して、市は地元中小企業への補助金を創設して法人30万円、個人事業主15万円で合計10億円の予算を組んだのである。ところが、にわか仕立ての補助金だったので、PR不足もあり、半分の5億円が残ってしまった。武蔵野市市議会の議決を得て中小企業振興のために組んだ予算の半分が残ったのでは… 

そのことが問題になる一方、夏を過ぎてもコロナ禍は収束しない。そこで秋頃より残った5億円の予算を活用して地元経済活性化の施策は打てないか、担当部局を中心に議論が重ねられた。

市内のどこの事業者でも使える割引券(プレミアム)が企画された。しかし、問題もあった。

  1. 割引券を発行すると、それを目標に市民が殺到する例があちこちで見られた。列を作り、長時間待たせて、市民であることを確認したりで混乱する密を引き起こす。
  2. 割引券が買えなくなったりして不公平(郵送で全市民に配布)。
  3. 武蔵野市には大型店やチェーン店が多いので、中小商業者のためにならない(A券・B券の発行)。
  4. 医療機関の窓口で支払う一部負担金に当てることは医者にかかることを市が奨励していることになり、社会保障の一環としておかしくないか(国の手引書に例示があるので、使用できることにする)。
  5. 割引券を受け取った市民が転売したり、他人に贈与したりしたら?(期間と事業者が市内に限定されているので、転売の恐れは少ない。また例外的に他人に贈与したりしても捕捉は難しいが、お買物券が使用されれば市内の事業者の振興に役立つ)。
  6. 登録する事業者が少ないと特定者に偏らないか?(商工会議所・商連などに協力を依頼し、スタート時1000以上をめざす)。

等々の議論を重ねて、前例のない全市民に郵送で割引券を配布するという事業が実現した。しかも500円券で1000円の買い物が出来るプレミアム率100%だ。ちなみに、現在東京都が計画している割引券はプレミアム率が30%である。予算は5億円の去年の残予算に2億円プラスして約7億円。市内に住民登録のある人は外国人でも対象になる。

ある市民から「今年の秋に市長選挙があるので、金券をばらまいたのか」との問い合わせがあった。私は次のように答えた。「私が知るところ、現場の担当職員の産業振興の執念が組織を動かし、副市長レベルで方向が決まったと理解している。最近、責任感と執念をもって仕事をやる職員が少ないがヒットですね」