新しい帝国主義、大国同士の戦争の可能性―岡本行夫先生のスピーチを聞く

新しい帝国主義、大国同士の戦争の可能性―岡本行夫先生のスピーチを聞く

今朝の政調、外交調査会で外交の専門家、リアリストの岡本行夫先生の40分にわたるスピーチを拝聴した。

「日本外交の指針~日米同盟と日米安保」
中国の習近平、ロシアのプーチン、北朝鮮の金正恩体制は2030年以降も続く
①中国の全国人民代表者大会で、憲法を改正して習近平国家主席の任期を撤廃する。この改正により2030年代まで、習近平氏は国家主席を努める事になるだろう。
②プーチン大統領の支持率は80%以上で再選確実だ。プーチン大統領が、この任期で辞めるとは思えないので、憲法改正してでも大統領を続けるだろう。2030年代まで大統領を続けるだろう。
③北朝鮮の金正恩労働党委員長は若いので、2030年代も続ける。
④これら独裁的指導者が率いる、核を所有する国々に囲まれた日本の安全保障をどうするかの問題。
日本の武装中立のためには最低50万人の軍隊と核武装が必要。日米同盟しかない。
⑤一部評論家の中には、スイスのように武装中立を主張する人がいるが、現実的ではない。
⑥中国は230万人の軍隊、自衛隊は23万人、武装中立なら最低でも50万人の人員と抑止力のための核武装が必要だ。
⑦アメリカの核管理の現状を、サイロの中まで入って見た事があるが、先制攻撃に反撃できるよう、核管理の基地の広さが日本の四国ぐらいの面積で分散管理されていて、誤作動しないように何重ものチェックシステムがある。
⑧武装中立はあり得ないので同盟しかない。自由と民主主義という価値観を共有するアメリカとしか選択肢はない。
ロシアはNATOが脅威、中国は大中華を目指し、北朝鮮は朝鮮半島の統一が狙いか?
⑨1991年ソ連邦が崩壊し、その後2000年プーチン大統領が就任したが、当初プーチン大統領は、これで米ロによる協調が始まると思っていたのではないだろうか。
⑩しかし2004年にバルト三国がNATOに加入、ルーマニアやブルガリアも続いた。
⑪それまでロシア周辺には西側NATOとの間に、いくつかの緩衝国があったが、NATOという軍事同盟がすぐそこに迫ってきている。
⑫当然だが、ロシアは領土の保全を最優先する。
⑬北方領土も同様だ。1956年、日ソ共同宣言で、平和条約締結後、歯舞・色丹を返還することを認めた。
⑭2001年、森首相との会談で、国後・択捉の日本の歴史的領有権を認めたが、その後NATOの東欧諸国への拡大を見て、日本に返還すれば北方領土も同様と考えたのだろう。
⑮習近平国家主席は中華帝国の復興を訴えているし、最近では「大中華」と表現している。北方でロシア領となっている地域も、かつては中国の影響下にあった地域もある。ロシアと事を構えることは考えていないにしても、南には台湾がある。台湾の解放も視野に入れているのか。
⑯金正恩の祖父、建国の父、金日成(キムイルソン)は1950年6月、韓国に侵攻し、3日でソウルを陥落させ、3ヶ月で釜山まで南下、米国が国連軍を組織して鴨緑江まで押し戻した。そこで中国が100万人を超える規模で介入して、1953年、38度線で休戦した。
⑰金正恩労働党委員長は、金日成の再現を夢見ているのだろうか。
日本の安全保障は日米同盟の強化で圧倒的抑止力を持つことだ。
⑱北朝鮮のミサイルはロフテッド軌道で、射程が4000kmだ。普通発射すれば13000kmは飛行能力があり、ワシントンにも到達する。後は大気圏再突入技術と核弾頭の小型化だが、専門家は1年以内に感性するという。
⑲南北和平交渉は時間稼ぎであるし、核ミサイルが完成したら、和平交渉打ち切りは、いくらでも理由がつく。
⑳日本の安全保障は日米同盟を強化して、圧倒的抑止力を持つことが大事だ。
㉑敵地攻撃能力を持つことは大事だ。相手国を攻撃するためではなく、抑止力を強めるためだ。
㉒ミサイルは秒速20kmで落下するので、この段階で打ち落とすのは、相当難しい。打ち上げ・上昇する過程、秒速8km程度の時に迎撃する。
㉓核や化学兵器を搭載したミサイルが、北朝鮮の自国内で迎撃されるとなると、日本の強力な抑止力として働く。
米国の小型原爆増産でロシアに対する抑止力となる。
㉔米国は広島型原爆の十分の一程度の、小型核爆弾の増産を決めた。
㉕原爆は、現在米・ソが各々6500発、英・仏・中などが300発前後、保持しているといわれている。
㉖ロシアは小型原爆を2000発保有していると言われ、実際の戦闘に使うことが想定されている。米国の空母は通常爆弾では沈めることは出来ないが、小型原爆なら可能だ。
㉗小型原爆の攻撃を受けても、戦略核で反撃すれば世界は終わりだ。だから戦略核は使えない兵器だ。
㉘小型原爆に対する抑止力は小型原爆搭載のミサイル増産だ。現在、米国が持つ小型原爆は200発程度と言われているが、航空機から投下するタイプは打ち落とされ抑止力にならない。
北朝鮮の核開発と米朝対話について国会で充分な議論を。
㉙米国は1980年代にSDI計画を発表した。その時、渡米して開発研究現場を見たが、開発現場は皆本気で完成させられると開発研究していた。
㉚SDI計画は、宇宙に監視網を巡らし、核ミサイルの同時発射攻撃を阻止するという計画だが、それを実現させようとするだけの力と体制がある。それがアメリカだ。
㉛北朝鮮の核ミサイル開発は、日本の防衛にとって決定的な影響を与えるので、米朝和平交渉の行方と日本の安全保障について、国会で充実した論議をして欲しい。

以上、40分にわたる岡本行夫先生の貴重な講演を拝聴した。岡本先生の真意が表現できたか否か、責任は総て私にあります。