武蔵野市の住民投票は請願権? では何故市や市議会は投票結果尊重義務を負うのか

武蔵野市の住民投票は請願権? では何故市や市議会は投票結果尊重義務を負うのか

12月13日の武蔵野市議会総務委員会で、珍妙な質疑と答弁があった。
橋本議員(共産党)
「住民投票制度は実質的な地方参政権とメディアが報道しているが、請願権に近いと思うがどうか」
市担当参事「その通りです」と答弁。

しかし実態は明らかに請願権と違うでしょう。請願権は憲法第16条に規定され「何人も(中略)平穏に請願する権利」と定められている。
請願を受ける側は国会や国の行政機関、地方公共団体の長や議会等、公の権限を有する機関だ。請願したからといって、差別待遇を受けない現代民主国家の基本原則だが、地方公共団体における住民投票制度と構造も効果も全く異なっている。

請願は一人で自由に何時でも出来るが、その結果について、国や地方公共団体の機関は義務を負うことはない。
①住民投票制度は地方公共団体にのみ認められている制度で、法律に基づく長や議員等の解職要求(リコール)等、四つの制度があり、投票結果がただちに法的効果を持つ拘束型住民投票だ。リコールを例にとれば、投票の過半数が解職に賛成すれば、市長や議員は辞めなければならない
②今回の武蔵野市の条例は、条例に基づいて住民の意思を問う諮問型で、市長や議会は「結果を尊重する」という規定だ。投票資格者の4分の1の発議で、投票資格者の2分の1で成立する。つまり一人で自由に出来る請願と、明らかに構造が異なる。さらに投票実施には4000万円の費用がかかると試算されている。この財源は税金だ。

憲法第16条の請願権に近いのではない。近いとすれば法律で定められたリコール等の拘束型住民投票と近いと言うべきではないか。拘束型住民投票は参政権である。
市独自の住民投票制度は、市議会が条例制定権を行使してつくる制度であり、投票結果を尊重する度合いが重くなればなるほど、実質的拘束力が発生し長や議会を拘束する。地方公共団体の住民による参政権の行使なのだ。

住民投票制度が請願権に近いと言ってしまえば、最高裁の判決など例に上げながら今まで積み上げてきた建設的議論がゼロになる。NHKの「チコちゃんに叱られる」の言葉を借りなければならない。