日本一の潜水士、渋谷正信さん ー洋上発電は電力だけでなく、漁礁になり海が豊かに

日本一の潜水士、渋谷正信さん ー洋上発電は電力だけでなく、漁礁になり海が豊かに

海運ビルの会議室で開催された講演会に出席しました。講師は日本一の潜水士の渋谷正信さん。20代から活躍して、潜水時間は4万時間という。40年潜水を続けたとして、1年間に1000時間、一日3時間潜水している計算になります東京湾アクアラインやレインボーブリッジの海底部の基礎工事を担当したと言います。

テーマは「海上風力発電と漁業は共存出来るか」です。渋谷さんは自分の見たことや体験したことしか発言しないと断った上で
① 海底固定式にしろ浮体方式にしろ、洋上発電の塔の周りが漁礁化して魚が寄ってくる。
② 浮体式の場合、3本のアンカーで海底に固定するが、アンカーに海藻が付着して魚の産卵場所にもなる。
③ まずプランクトンが付着して、海藻が育ち、小魚が寄り、やがて中型魚が寄るようになる。
④ 海底構造物の漁礁化は、東京湾アクアラインやレインボーブリッジをはじめ沢山の場所で確認されている。
⑤ 洋上発電も五島列島で9基(沖合4kmで間隔700m)で実際にやって見たが、年々海藻が繁藻して豊かな漁場になっている。
⑥ 網漁は難しいかも知れないが、一本釣りの漁業は確実に漁獲高が増えている。
⑦ 地球温暖化の影響で、北海道のシャケ漁の網にブリが入ったり、秋田でアマダイが獲れる。
⑧ 日本の近海は磯焼けの被害が拡大して、カジメ・コンブ・ホンダワラ等が喪失している。漁場管理をきちんとやることが必要だ。 

そこで、ヨーロッパの海を実際に潜って感じたこと。
① ヨーロッパの海は、日本ほど荒れていない。魚も海藻も多い。
② オーク島(イギリスの北方)では、波力発電や潮力発電の計画もある。
③ 漁業は網漁は少なく、一本釣り漁とホタテやロブスター漁だ。
④ ホタテは国の基準で10cm以上が漁獲対象で、それ以下は禁止となっているが、自主規制で12cm以上としてそれ以下は海へ帰している。また小さいカニや子を持っているロブスターも海へ返してした。
⑤ オランダやデンマークでも同様だった。自分の子どもや孫にも漁業を継がせるため、海に感謝して資源を大切にしている。それが大事だ。
⑥ 洋上風力は単なる発電事業だけではもったいない。波力・潮力さらに豊かな海をつくり、魚や貝類・海藻類など総合的な海の活用が望まれる。 

(質問)国や自治体の紹介で漁港などを紹介されて行ったのですか?
(答)誰の紹介でもなく、どこでも自分で現場に行きます。潜水士仲間がいて、お互いにすぐ分かり合います。海に潜れば言葉はいりません。

会場に来ていた受講者は20数名。東海大学や海洋大学などの大学関係者や商社、海運関係者が多かったです。私は現役の代議士時代からご案内を頂いています。専門外ですが、これからも参加したいと思います。実に未来が明るくなる、素晴らしい渋谷正信さんの講演でした。