松下市長、住民投票に外国人を加えるなら、憲法の国民主権や最高裁判決をよく読んで理解しないと、底の浅い議論になりますよ
11月26日付毎日新聞の東京・多摩版に、市長提出の武蔵野市住民投票条例の記事が掲載された。この投票条例に外国籍住民の投票権を居住3ヶ月の要件で認めることについて、論議が沸騰している。憲法が定める国民主権に触れるからである。
この記事によれば、
(松下)地方自治法上の「住民」に国籍の規定はない。この制度に限って外国籍市民を除くことに合理的理由を見出せない。
この程度の認識で外国人投票権を認めるとすれば、市長としていかがなものか。
①地方自治法の上に憲法があり、国民主権の大原則が明示されている
②憲法の前文は「日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じ行動し」とある。ここで国民主権と代表制民主主義を規定している
③憲法第15条で国会議員をはじめ公務員を選定し、罷免することは国民固有の権利であると規定
④憲法第41条で「国会は国権の最高機関で唯一の立法機関」と定めている
⑤憲法第93条2項で、地方公共団体の長と議員は「住民」が直接選挙で選ぶと規定している
以上の憲法構造を基にして外国人の地方参政権についての行政裁判で最高裁は判決を出し、
●憲法第73条2項でいう「住民」は当該地域に住む国民であると判示している(平成7年2月28日最高裁小法廷)
●さらにこの判決に直接関係しない傍論で「外国人のうちでも、永住許可者等であって、その居住する地方公共団体と特段緊密な関連を持つに到ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共事務の処理に反映させるべく法律をもって地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である」と。
しかしながら、右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかると判示している。
尚、この最高裁小法廷判決の傍論については「争いになってない事柄まで言及している」「立法作用を促しているような判決で傍論として行き過ぎでは?」等の評価がある。
これら一連のことを要約すると、
1.憲法第93条2項の住民とは国民であり、参政権は国民に与えられている
2.地方自治の制度の主旨からいって、永住外国人等に参政権を与えることまで憲法は禁止していないが、その場合でも法律で定めなければならない
という結論が導かれる。住民投票制度は広い意味での住民の参政権の一部とみなされているので、投票権を付与するということは、外国籍住民に参政権の一形態を与えることになるのでは?
「松下市長、地方自治法上の住民には国籍の規定はない」など短絡的に考えないで、憲法に基づき国民主権とは何か、地方自治とは何かを論議して下さい。