憲法勉強会の教科書に「集団的自衛権は憲法違反」と主張した長谷部恭男さんの著作を使うのですか?

憲法勉強会の教科書に「集団的自衛権は憲法違反」と主張した長谷部恭男さんの著作を使うのですか?

10/10のブログを見て、長谷部恭男編の岩波文庫を憲法の教科書に使うのは、どういう理由ですか?と意見が寄せられました。

確かに長谷部恭男氏は、安倍内閣時代の2015年6月に衆議院の憲法審査会に自民党の参考人として呼ばれて「集団的自衛権は憲法違反」と発言しました。喜んだのは野党で、自民党は面目を失って、安保法制の成立に影響しました。

岩波文庫の『日本国憲法』は長谷部恭男氏が憲法学者として解説を書いていますが、中心は日本国憲法以下の基本文書で成り立っています。以下に、この文庫を教科書に使う意味を書きます。
① この本には、日本国憲法・大日本帝国憲法(明治22年制定)・パリの不戦条約・ポツダム宣言・降伏文書・昭和27年に戦勝国との間で結ばれた平和条約、さらに日米安全保障条約(1960年)など、今日の日本を形作る基本文書が収録されていること。
② 文庫本なのでハンディで、持ち運びに便利。2019年第一刷で手に入りやすい。さらに定価(680円+税)と安い。
③ 長谷部恭男さんが解説を書いているが、著者の立場を十分考慮して読めばよい。

さらに、この本に収録された連合国との平和条約(サンフランシスコ条約)には、安全の項で次のような興味深い記述があります。
「連合国としては、日本国が主権者として国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することが出来ることを承認する」(第三章第五条(c))

サンフランシスコ条約が効力を発したのは1952年4月。それに先立ち、日本国憲法が占領下で施行されたのが1947年5月でした。