安倍元総理は戦後レジームからの脱却を掲げたが、一部から歴史修正主義者と攻撃された。しかし第二次世界大戦終了から77年経た今日、戦後のレジームは大きく変化している

安倍元総理は戦後レジームからの脱却を掲げたが、一部から歴史修正主義者と攻撃された。しかし第二次世界大戦終了から77年経た今日、戦後のレジームは大きく変化している

“戦後レジーム”の象徴は国際連合だが、UNの名称どおり米・英・仏・ソ・中が中心の第二次世界大戦の勝者国連合だ。それも圧倒的に米国のパワーが勝っていた。事実、この時点で核爆弾を持っていたのは米国ただ一国だったが、その後逐次増え、上記五大国が総て核保有国だ。

“戦後レジーム”の変革の第一は植民地だった国々が世界中で独立して、インドのように世界有数の大国となり「核」まで持つようになった。いわゆる民族独立、第三世界の台頭だ。

それと並行して起こったのが中国の共産革命で、国連の五大常任理事国の中国は、蒋介石の中華民国から毛沢東の中華人民共和国に変わった。

決定的変化は、1989年11月のベルリンの壁の崩壊。1990~91年にかけて起こったソ連と東欧の共産国が解体して、市場原理を採用する民主主義国に変わったことだ。中国も社会主義的市場主義という言葉で、今日の隆盛を築いている。

安倍元総理が中央政界で活躍するようになったのは1990年代後半からだから、まさに“戦後レジーム”は変革しつつあったのである。

安倍元総理の「戦後レジームからの脱却」は、世界中が米・英・仏・ソ・中の勝者国連合中心から多様化して抜本的に変化しているのだから、日本も「悪しき帝国主義による敗戦国」のイメージから脱却して、アジアの中で独自のあゆみを始めるべきではないかという提案なのだ。

自由と民主主義、人権を共通の価値観として持つ国々が連帯して、新しい世界秩序を作ろうという呼びかけだ。「地球儀を俯瞰する外交」であり、日米同盟も可能な限りお互い助け合う双務性を持ったものに変化させるべきだとの信念だった。

安倍元総理は、理想と構想力と政治的決断と行動を併せ持つ、稀有な、日本の歴史に残る大政治家でした。

改めて深い敬意を捧げます。